こころのリスク状態とは
思春期・青年期はこころのリスク状態が高まり、さまざまなこころの病気を発症しやすいと言われています。
思春期は身体の変化と同時にこころも変化する時期です。自分自身のこと、親や友達関係で悩み、こころのバランスを崩すことも少なくありません。
身体の調子が崩れると病気になることがあるように、こころのバランスが崩れるとこころの病気になることがあります。
こころの病気になる危険性が高くなっている状態を“こころのリスク状態”と言い、うつ病や統合失調症などの病気になるリスクが高まっている状態を指しています。
症状は人によって色々なパターンがあります。
「こころの不調のパターン」を示します。
- ●自分の考えでない考えが浮かんでくる。どうでもよいことが頭に出てきて疲れる。
- ●人の話を聞くと、遠回しに自分のことを言っている気がする。車の音が自分を笑っているように感じる。
- ●人の視線を感じて落ち着きがなくなる。人の集まる場所では見られている感じでつらい。
- ●掃除機の音が前より大きく感じる。時計の秒針の音、冷蔵庫の音などに敏感になった。
- ●いつも不安がつきまとい、イライラして、じっとしていられない。自分が抑えられない。
- ●まわりに誰もいないのに、人の声が聞こえてくることがたまにある。
- ●考えが頭の中でまとまりづらい。考えていることが頭の中で収まらず、独り言を言ってしまう。
- ●感情が乏しく、何か無気力になり、部屋に引きこもるようになってきた。精神科的な病気でないか心配だ。
- ●シャワーや入浴に2時間以上かかるようになった。自分としては、よく洗うためにはそれくらい必要だと思うが、生活に支障がでてきた。
- ●自分も人も信じられない。自分の居場所がない。死んでしまいたい。
実際にないものが見えたり、聞こえたり、感じられたりすることがあります。ほかには、普通でない考えにとらわれてしまったり、なんとなく自分が注目されていたり、みんなから見られているような感じを受けたりすることがあります。考えや行動がばらばらでまとめることが難しいということもあります。
もちろん、ストレスを感じる際にこのような不調を経験することは珍しいことではありません。
これまでの研究では、10代の人たちの約15%(1クラス40人とすると、おおよそ6人)の人たちが、一時的にこのような体験をしたことがあると報告されています。こうした「こころのリスク状態」の方が、必ずしもこころの病気になるわけではないので、心配し過ぎるのもよくないのですが、不安や気分の落ち込みを感じながらこのような不調が続く際には、うつ病や統合失調症などのこころの病気を発症する可能性が高くなりますので、上記のような不調や困難が持続しリスクが高いと思われる時には、この状態を見過ごさずに専門家に相談をしてほしいと思っています。必要な支援を早期に受けて頂き、よりよい回復ができるまでのお手伝いができることを願っています。